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がん:MDM4は皮膚黒色腫の重要な治療標的である
Nature Medicine 18, 8 doi: 10.1038/nm.2863
p53腫瘍抑制経路の不活性化は、TP53(腫瘍タンパク質53をコードする)の変異を介して頻繁に起こり、ヒトのがんでは一般的な段階である。しかし、化学療法にきわめて高い耐性を示す黒色腫ではTP53変異はまれであり、黒色腫はp53が介在する腫瘍抑制を別の方法で克服していることが考えられる。今回我々は、p53の負の調節因子であるMDM4(Mdm4 p53 binding protein homolog)が、I-IV期のヒト黒色腫のかなりの割合(〜65%)で発現が上昇しており、がん遺伝子Nrasによって誘導した黒色腫マウスモデルでは、メラノサイト特異的なMdm4の過剰発現により腫瘍形成が促進されることを示す。MDM4は、p53のアポトーシス促進機能に拮抗することによりヒト転移性黒色腫の生存を助長する。特に、MDM4-p53相互作用の阻害は黒色腫細胞でp53機能を回復させ、その結果、細胞毒性化学療法およびBRAF(V600E)がん遺伝子阻害剤に対する感受性が上昇する。今回の結果は、MDM4がヒト黒色腫におけるp53機能障害の主要な決定因子であることを明らかにし、MDM4が黒色腫に対する併用療法の有望な標的であることを示している。