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糖尿病:RANKLシグナル伝達の遮断は肝臓のインスリン抵抗性を改善し糖尿病発症を防止する
Nature Medicine 19, 3 doi: 10.1038/nm.3084
肝臓でのインスリン抵抗性は、2型糖尿病(T2DM)の発症を推進し、肝臓での過剰な脂質貯蔵とそれに続く炎症に密接に関連している。転写因子NF-κBおよびその下流の炎症性シグナル伝達経路の全身および肝臓における活性化は、肝臓でのインスリン抵抗性やβ細胞機能不全の病因における重要な事象だが、これに関与する分子機構は十分に解明されていない。我々は、典型的なNF-κB活性化因子であるRANKL(receptor activator of NF-κB ligand)がこの過程にかかわっているという説を、疫学的および実験的手法の両方によって検討した。集団を用いる前向き研究であるBruneck研究では、血清中の可溶性RANKL濃度の高値は、2型糖尿病発症の有意(P<0.001)で独立したリスク予測因子であることが明らかになった。この結果とほぼ一致して、2型糖尿病の遺伝学的および栄養的マウスモデルで全身あるいは肝臓でのRANKLシグナル伝達を遮断すると、肝臓のインスリン感受性の顕著な改善、血漿グルコース濃度および耐糖能の改善あるいは正常化が引き起こされた。まとめると、この研究は2型糖尿病の発症機序にRANKLシグナル伝達が役割を担っていることの証拠を示している。もしこれが正しければ、RANKL活性を低下させて骨粗鬆症を治療するために現在使われている薬理学的戦略のどれかを転用して、今回の結果を臨床治療に応用することが実行できるかもしれない。