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代謝内分泌:GLP-1受容体活性化とEpac2は心房性ナトリウム利尿ペプチド分泌と血圧制御とを結びつける
Nature Medicine 19, 5 doi: 10.1038/nm.3128
GLP-1R(glucagon-like peptide-1 receptor)アゴニストは降圧作用を持つが、その作用機序は十分解明されていない。本論文では、心臓でのGlp1r発現は心房に局在しており、GLP-1Rの活性化は心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の分泌と血圧の低下を促進することを明らかにする。GLP-1R活性化がもたらす降圧作用の機序がANP依存性の間接的なものであることと一致して、GLP-1Rアゴニストであるリラグルチドは、環状GMP(cGMP)の量を直接増加させることはなく、また、前収縮させた大動脈輪の弛緩も引き起こさなかった。しかし、リラグルチドを投与した心臓の潅流液は、内皮非依存的かつGLP-1R依存的に大動脈輪を弛緩させた。リラグルチドは、Glp1r−/−あるいはNppa−/−マウスではANP分泌、血管弛緩あるいは血圧低下を引き起こさなかった。心筋細胞でのGLP-1R活性化は、Rapグアニンヌクレオチド交換因子であるEpac2(別名Rapgef4)の膜への移動を促進したが、Epac2を欠損させるとANP分泌のGLP-1Rに依存した促進がみられなくなった。絶食させた野生型マウスに餌を摂取させると血漿ANP濃度は増加したが、絶食させたGlp1r−/−マウスに餌を与えても血漿ANP濃度は増加しなかった。また、リラグルチドは、野生型マウスで尿中ナトリウム排泄量を増やしたが、Nppa−/−マウスでは増加はみられなかった。これらの知見は血圧を調節するGLP-1R依存的かつANP依存的な腸−心臓軸を明らかにしている。