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骨疾患:軟骨下骨の間葉系幹細胞でのTGF-βシグナル伝達阻害は変形性関節症を軽減させる
Nature Medicine 19, 6 doi: 10.1038/nm.3143
変形性関節症は、非常に広く見られる衰弱性の関節疾患である。有効な医学的治療法は存在しないが、それはこの疾患の病因がまだ十分に解明されていないためである。本論文では、前十字靭帯切断(ACLT)によって作製した変形性関節症マウスモデルで、力学的負荷の変化に応答して軟骨下骨でトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)が活性化されることを示す。TGF-β 1の濃度は、変形性関節症患者の軟骨下骨でも高い。高濃度のTGF-β1は、ネスチン陽性間葉系幹細胞(MSC)の細胞塊形成を引き起こし、これが骨髄で高度の血管新生を伴う類骨島の形成につながる。骨芽細胞で活性化TGF-β1をトランスジェニック発現させると変形性関節症が誘発されるが、軟骨下骨でTGF-β活性を阻害すると関節軟骨の変性が軽減された。特に、ネスチン陽性MSCのTGF-βII型受容体(TβRII)をノックアウトしたマウスでは、ACLT後の変形性骨関節症発症が野生型マウスに比べて少なくなった。したがって、軟骨下骨の活性化TGF-β 1濃度が高いと、変形性関節症の病的変化が開始されるらしく、この過程の阻害は変形性関節症治療の有望な手法となる可能性がある。