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造血:化学療法が引き起こす骨髄神経損傷は造血能再建を障害する
Nature Medicine 19, 6 doi: 10.1038/nm.3155
抗がん化学療法薬の使用には、造血組織の再建という難問が付随しており、通常は長期にわたる後遺症状が生じる。造血幹細胞および間質細胞の化学療法による機能低下は詳しく調べられているが、造血機能不全をもたらす機序はまだ解明されていない。シスプラチンによる化学療法を複数サイクル行うと、かなり重症の感覚ニューロパチーが引き起こされる。本論文では、化学療法薬によってマウス骨髄に生じた神経損傷が、造血能再建を障害する重要な損傷であることを明らかにする。薬理学的および遺伝学的モデルを用いて、骨髄中のアドレナリン作動性神経支配を選択的に消失させると、遺伝毒性物質処理による神経損傷後の骨髄再生に変化が生じることがわかった。骨髄の交感神経は、骨髄回復を開始させる幹細胞ニッチの構成成分の生存を促進する。交感神経細胞のTrp53欠失による神経保護、あるいは4-メチルカテコール投与もしくはグリア細胞由来神経栄養因子投与による神経再生は、造血能回復を促進する。これらの結果は、造血幹細胞ニッチを損傷から保護するのに、アドレナリン作動性神経の保護が有用である可能性を実証している。