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糖尿病:ニクロサミドエタノールアミンが誘発する軽度のミトコンドリア脱共役はマウスで糖尿病の症状を改善する
Nature Medicine 20, 11 doi: 10.1038/nm.3699
2型糖尿病(T2D)の患者数は、世界的に大幅に増え続けている。現在行われている糖尿病治療法のほとんどは、この疾患で見られる高血糖症状は軽減するが、その根本原因の改善には有効でない。T2Dの原因となる重要な要因の1つは、代謝の影響を受けやすい肝臓や筋肉のような臓器での脂質の異所性集積である。ミトコンドリア脱共役は細胞のエネルギー効率を下げ、脂質酸化を亢進するため、糖尿病に対する治療戦略として関心を集めている。しかし、そこで難問となるのは、臨床で使用できる安全なミトコンドリア脱共役剤の発見である。ニクロサミドは米国食品医薬品局に認可された駆虫薬であり、寄生虫のミトコンドリアを脱共役する。本論文では、ニクロサミドのエタノールアミン塩(NEN)が、比較的高いナノモル濃度で哺乳類ミトコンドリアを脱共役することを示す。NENをマウスに経口投与すると エネルギー消費と脂質代謝が増大した。NENはまた、高脂肪食により引き起こされる脂肪肝およびインスリン抵抗性の予防と治療にも有効である。さらに、NENはdb/dbマウスでの血糖コントロールを改善し、疾患進行を遅らせることも分かった。NENには裏付けが十分な安全性プロファイルがあることから、今回の結果は、T2Dに対する新規で実用可能と思われる薬理学的治療法を明らかにしている。