Article

神経変性疾患:アスパラギンエンドペプチダーゼによるタウ切断はアルツハイマー病で神経原繊維の病的変化を引き起こす

Nature Medicine 20, 11 doi: 10.1038/nm.3700

切断され過リン酸化されたタウタンパク質から成る神経原繊維変化(NFT)は、アルツハイマー病(AD)などの多数の老化関連神経変性疾患に共通する特徴である。しかし、老化過程でタウの切断と凝集をもたらす分子機構はまだ分かっていない。今回我々は、リソソームのシステインプロテアーゼであるアスパラギンエンドペプチダーゼ(AEP)が老化に伴って活性化され、タンパク質分解によってタウを切断し、その微小管結合能を失わせてタウ凝集を誘導し、神経変性を引き起こすことを示す。AEPは老化過程で発現が増加して活性になり、ヒトのAD脳やシナプス異常と行動障害を伴うP301S変異タウ導入マウスでは活性化されていて、これがNFTでのタウの切断につながる。AEPをコードする遺伝子を欠損したP301S変異タウ導入マウスでは、タウ過リン酸化が大幅に低下し、シナプス消失が少なくなって、海馬のシナプス機能障害と認知障害が改善する。非切断型変異体タウをコードするアデノ随伴ウイルスを感染させたマウスでは、P301S変異タウをコードするアデノ随伴ウイルスを注射したマウスに比べて、病理学的異常と行動異常の症状が軽減していた。総合すると、以上の結果はAEPがタウに関連した臨床的、神経病理学的変化の重要なメディエーターとして作用することを示している。AEPの阻害は、タウが仲介する神経変性疾患の治療に有効であると考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度