Analysis
がん:造血系のクローン性増殖や悪性腫瘍と関係する加齢関連変異
Nature Medicine 20, 12 doi: 10.1038/nm.3733
白血病やリンパ腫の特徴である複数の遺伝子変異が、外見上は血液系悪性腫瘍が生じていない個体の血液で検出されている。がんゲノムアトラス(TCGA)は、造血系の幹細胞や前駆細胞がクローン性増殖するのに関わっている可能性がある遺伝子や血液中の変異を網羅的に発見するための、他に類のない手段となっている。我々はTCGAが持つ2728人分の血液由来配列データを解析し、がん関連遺伝子中で77個の血液特異的変異を発見したが、それらの大半は高齢と関連していた。注目すべきことに、これらの変異の83%は、白血病かリンパ腫、あるいはその両方に関連した19個の遺伝子で見つかり、9つは反復的に変異を起こしていた(DNMT3A、TET2、JAK2、ASXL1、TP53、GNAS、PPM1D、BCORL1およびSF3B1)。我々は、血球の非常に小さい分画中でさらに14個の変異を突き止めた。これらはおそらく造血幹細胞におけるクローン性増殖の最初期にあたる。得られた知見と血液系悪性腫瘍における変異を比較することで、反復的に変異が生じていて、疾患イニシエーションに関わっている可能性がある複数の遺伝子が見つかった。我々の解析から、2%以上の個体(70歳以上では5〜6%)の血球が変異を含んでいることが明らかになり、これらは造血系のクローン性増殖を引き起こす前がん事象にあたる可能性がある。