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肥満:肥満の際に肝臓で見られる小胞体–ミトコンドリア接触部位の慢性的増加は、ミトコンドリア機能不全をもたらす
Nature Medicine 20, 12 doi: 10.1038/nm.3735
小胞体とミトコンドリアが適切に機能することは細胞の恒常性に必須であり、このどちらかの機能不全は代謝性疾患などの病態生理的状態につながる。小胞体とミトコンドリアが細胞で果たす役割は異なっているが、これら2つはMAM(mitochondria-associated ER membrane)と呼ばれる部位で物理的に結合しており、この部位はカルシウム、脂質や代謝物の交換に不可欠である。今回我々は、肥満が肝臓でMAMの顕著な再編成を引き起こし、その結果ミトコンドリアでカルシウム過負荷、酸化機能の障害や酸化ストレスの増強が引き起こされることを示す。小胞体-ミトコンドリア接着を実験的に誘導すると、酸化ストレスと代謝恒常性障害が起こるが、小胞体-ミトコンドリアの連結に重要なタンパク質のPACS-2あるいはカルシウム輸送に重要なIP3R1の発現を低下させると、肥満動物ではミトコンドリア酸化能とグルコース代謝が改善される。以上の結果は、小胞体-ミトコンドリアの過剰な連結は肥満における細胞内小器官機能不全の重要な要素であり、インスリン抵抗性や糖尿病などの代謝病態の発症に関与する可能性があることを立証している。