がん:PRKCD–FBXO25–HAX-1経路の破壊はアポトーシス応答を低下させてリンパ腫発生を駆動する
Nature Medicine 20, 12 doi: 10.1038/nm.3740
我々は、ヒトB細胞リンパ腫でユビキチン-プロテアソーム経路に影響する遺伝的変化を探索し、マントル細胞リンパ腫(MCL)で欠失していることが多い最小共通領域内にあるFBXO25を見つけ出した。FBXO25は、オーファンFボックスタンパク質の1つで、SCF(SKP1–CUL1–F-box)FBXO25ユビキチンリガーゼ複合体の基質特異性を決定しているタンパク質をコードしている。不偏スクリーニングにより、生存促進性タンパク質であるHAX-1(HCLS1-associated protein X-1)が、アポトーシスを引き起こすストレス曝露後にFBXO25の標的となる真の基質であることが明らかになった。プロテインキナーゼCδ(PRKCD)は、FBXO25およびHAX-1をリン酸化し、それによって核内のFBXO25をミトコンドリアのHAX-1のところへ移動させて、この過程を開始させる。原発性ヒトMCLについての解析から、FBXO25の単一対立遺伝子喪失が起こり、また HAX1のホスホデグロン変異が安定化していることが突き止められた。それ故、FBXO25が欠失したMCL細胞でFBXO25を再発現させると細胞死が促進されるが、HAX-1のホスホデグロン変異体の発現はアポトーシスを阻害する。加えて、FBXO25のノックダウンは、Eμ-MycマウスおよびヒトMCL異種移植片モデルでリンパ腫発生を大幅に促進した。以上の結果は、HAX-1の安定性を制御する、PRKCD依存性のアポトーシス促進機構を明らかにしており、FBXO25はハプロ不全性の腫瘍抑制因子として機能していて、HAX1はMCLにおけるがん原遺伝子であると、我々は考える。