アテローム性動脈硬化:ヒト・アテロームには機能が損なわれたアポリポタンパク質A1が大量に存在する
Nature Medicine 20, 2 doi: 10.1038/nm.3459
最近の研究で、ヒトのアテロームから取り出された高密度リポタンパク質(HDL)とその主要な構成タンパク質であるアポリポタンパク質A1(apoA1)は正常な機能を失っており、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)によって広範囲に酸化されていることが示されている。in vitroでapoA1あるいはHDL粒子をMPOによって酸化すると、コレステロール受容体としての機能が損なわれる。本論文では、ファージディスプレイによる抗体親和性増強法を使って、MPO-H2O2-Cl−系によって修飾されたapoA1 およびHDLの両方を特異的に認識する高親和性のモノクローナル抗体を作製した。apoA1のTrp72のオキシインドリルアラニン(2-OH-Trp)部分がこの抗体の免疫原性エピトープである。変異誘発実験により、apoA1のABCA1(ATP-binding cassette transporter A1)依存性コレステロール受容体活性のMPOが関わる阻害に、Trp72が重要な役割を果たしていることがin vitroおよびin vivoで確認された。2-OH-Trp72基を含むapoA1(oxTrp72-apoA1)の循環血中の量は少ないが、アテローム性動脈硬化症を発症している動脈ではapoA1の20%を占める。ヒトのアテロームあるいは血漿から取り出したoxTrp72-apoA1は結合脂質量が少なく、コレステロール受容体活性はほとんど失われており、血管内皮細胞に対する強力な炎症促進性活性とin vivoでのHDL生合成活性障害が見られた。心臓病外来に来院した患者(総数627人)では、oxTrp72-apoA1レベルの上昇が心血管疾患リスクの上昇と関連していた。循環血中のoxTrp72-apoA1レベルは、動脈壁でのアテローム生成促進過程を監視する手段となるかもしれない。