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糖尿病:MST1は糖尿病でのβ細胞のアポトーシスと機能不全の重要な調節因子である
Nature Medicine 20, 4 doi: 10.1038/nm.3482
アポトーシス細胞死はインスリン産生β細胞喪失の特徴で、糖尿病の全ての病型で認められる。現在行われている治療法では機能を備えたβ細胞量の減少を停止させることができず、β細胞のアポトーシスと機能不全を防止する新たな治療戦略が緊急に必要とされている。本論文では、MST1(mammalian sterile 20–like kinase-1)が、β細胞のアポトーシス細胞死と機能の非常に重要な調節因子であることを明らかにする。糖尿病が発症するような条件下では、MST1はヒトおよびマウスの膵島中のβ細胞で強く活性化されており、BH3(BCL-2 homology-3)-onlyタンパク質であるBIMの発現上昇を介してミトコンドリア依存性アポトーシス経路を特異的に誘導する。MST1はβ細胞の転写因子PDX1のT11を直接リン酸化し、その結果PDX1のユビキチン化と分解が起こってインスリン分泌が障害された。MST1を欠損させると、in vitroおよび in vivoで血糖値が正常になり、β細胞の機能と生存が回復した。従って、MST1はアポトーシス促進性のキナーゼで、アポトーシスシグナル伝達とβ細胞機能不全の重要なメディエーターであることが示された。MST1は糖尿病の新たな治療法開発のための標的となる可能性がある。