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感染症:エストロゲン関連受容体γのインバースアゴニストは宿主の鉄恒常性の調整によりネズミチフス菌感染を制御する
Nature Medicine 20, 4 doi: 10.1038/nm.3483
微生物感染の際には、それに応答して肝細胞でデフェンシン様ペプチドのヘプシジン(Hampにコードされる)の発現が誘導され、マクロファージからの鉄の放出が減少する。我々は、マクロファージ内で増殖する細菌のネズミチフス菌(Salmonella enterica var. Typhimurium)が自己の生存のために宿主の鉄代謝を変化させる機構を解明する目的で、核内受容体ファミリーのNR3Bサブファミリーに属するメンバーのマウス肝細胞での役割を調べた。本論文では、エストロゲン関連受容体γ(ERRγ、Esrrgにコードされる)が宿主の鉄恒常性の変化によりネズミチフス菌のマクロファージ内での増殖を調整することを示し、ERRγのインバースアゴニストの抗菌効果を実証した。マウスでは、肝臓でのERRγ発現はネズミチフス菌が誘発するインターロイキン6シグナル伝達によって引き起こされ、その結果ヘプシジンが誘導されて最終的に低鉄血症が起こる。逆に、肝臓でERRγのmRNA発現がなくなると、ネズミチフス菌によるヘプシジン誘導が減弱し、ネズミチフス菌感染によって発症した低鉄血症が正常化した。ERRγのインバースアゴニストは、ERRγによるヘプシジンmRNA発現を低下させることでネズミチフス菌による低鉄血症を軽減させ、ネズミチフス菌感染に対して強力な抗菌作用を示し、宿主の生存率を改善する。まとめると、以上の知見は、宿主の鉄恒常性の調節により多剤耐性細胞内細菌の増殖を防止するという全く別の手法を示唆している。