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アテローム性動脈硬化:マイクロRNA-126-5pはDlk1の抑制により内皮増殖を促し、アテローム性動脈硬化を制限する

Nature Medicine 20, 4 doi: 10.1038/nm.3487

アテローム性動脈硬化は、高脂血症によって引き起こされる動脈壁の慢性的な炎症過程で、層流の乱れが血管内皮細胞(EC)の機能を低下させている部位で生じやすい。本論文では、内皮細胞のmiR-126-5pが、Notch1を阻害するDlk1(delta-like 1 homolog)の抑制によりECを増殖状態に維持し、それによってアテローム性動脈硬化の病変形成を防止することを示す。Mir126−/ −マウスでは剥離後の内皮修復が損なわれており、これは内皮がmiR-126-5pを欠くためにDlk1の抑制が外れてEC増殖が低下することが原因だが、miR-126-3pの欠失ではこのような影響は見られない。また、アテローム性動脈硬化が起こりにくい部位では、内皮細胞はmiR-126-5pの濃度が高いことで増殖状態に維持されており、高脂血症がもたらす増殖阻害的影響が相殺される。そのため、Mir126−/−マウスではアテローム性動脈硬化が悪化する。これに対して、アテローム性動脈硬化の起こりやすい部位では、層流の乱れによってmiR-126-5pの発現量が低下しており、Dlk1発現が増加するために高脂血症のストレスに応じてECの増殖が見られなくなる。miR-126-5pの投与により、動脈硬化の生じやすい部位でのEC増殖が回復し、アテローム性動脈硬化が制限されたので、この方法が治療に使える可能性が出てきた。

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