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幹細胞:Kindlin-1はWntとTGF-βの利用可能性を調節して皮膚幹細胞の増殖を制御する
Nature Medicine 20, 4 doi: 10.1038/nm.3490
Kindlin-1はインテグリンの尾部に結合するタンパク質で、インテグリンの活性化を制御している。Kindlin-1をコードするFERMT-1遺伝子の変異は、ヒトのキンドラー症候群を引き起こす。この疾患は、皮膚水疱形成、皮膚の早期老化、原因不明の皮膚がんを特徴とする。本研究では、マウスの角化細胞でKindlin-1を欠失させるとキンドラー症候群が再現され、また幹細胞区画の拡大と過剰な活性化が起こって、表皮の過度な肥厚化や異所的な毛包発生、皮膚がん感受性の増大が起こることを示す。機構としては、Kindlin-1はβ1インテグリン群を介して角化細胞の接着を制御しており、 またαvβ6インテグリンを介するトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)の活性化促進と、インテグリン非依存的なWntリガンド発現調節を介するWnt-βカテニンシグナルの阻害によって皮膚上皮幹細胞の増殖と分化を制御している。これらの知見は、Kindlin-1が、TGF-βを介した増殖抑制シグナルと、Wnt-βカテニンを介した増殖促進シグナルのバランスをとることにより、皮膚の上皮幹細胞の恒常性を制御するという、これまでに知られていなかった非常に重要な役割を果たしていることを明らかにしている。