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がん:組織の機能的構造はマイクロRNAに依存するPTEN発現を調整して悪性腫瘍のプログレッションを調節する
Nature Medicine 20, 4 doi: 10.1038/nm.3497
組織の機能的構造は発生と恒常性を調節しており、腫瘍のプログレッションに伴って改変を受ける。しかしながら、変化した機能的構造が組織の挙動を調節する基本的な分子機構や、こうした変化の臨床への関連については明らかになっていない。本論文では、マトリックスの固さが増すことによりマイクロRNAの発現が調整され、インテグリンによるβカテニンとMYCの活性化を介して、腫瘍のプログレッションが促進されることを示す。ヒトとマウスの組織では、マトリックスの固さを増すことでmiR-18aが誘導された。miR-18aは直接、またHOXA9(homeobox A9)のレベルを低下させることにより間接的に、腫瘍抑制因子PTEN(phosphatase and tensin homolog)のレベルを低下させた。臨床的には、ヒトの乳がん生検では細胞外マトリックスの固さが直接、またかなりの程度までmiR-18aの発現と関連していた。miR-18a発現は基底細胞様乳がんで最も高く、その一方でこのがんではPTENとHOXA9のレベルが最も低かった。また、miR-18aの高発現によって、管上皮乳がん患者での予後不良が予測された。今回の知見は、機能的構造により調節されるマイクロRNA回路を明らかにしている。この回路は腫瘍の悪性度を促進する可能性があり、管上皮乳がん患者の層別化ではHOXA9やmiR-18aのレベルが予後因子となると考えられる。