サラセミア:トランスフォーミング増殖因子βスーパーファミリーのリガンド捕捉剤ACE-536は赤血球形成の後期段階の促進により貧血を治療する
Nature Medicine 20, 4 doi: 10.1038/nm.3512
エリスロポエチン(EPO)は、早期段階の赤血球前駆細胞の増殖を刺激し、慢性貧血の治療に広く使用されている。しかし、EPO抵抗性貧血の複数のタイプは後期段階赤血球形成の異常を特徴とし、この段階はEPO非依存性である。我々は、リガンド捕捉性融合タンパク質(ACE-536)を用いて赤血球形成の調節について調べた。ACE-536は、アクチビンの結合量を低下させるように改変したヒトアクチビン受容体IIB型(ActRIIB)の細胞外ドメインを含む。ACE-536、あるいはそのマウス版であるRAP-536は、基礎的条件下で複数種の動物で赤血球数の迅速かつロバストな増加を引き起こし、また、マウスモデルで貧血を軽減あるいは防止した。RAP-536は、EPOとは異なり、in vivoで後期段階の赤血球前駆細胞の成熟を促進した。ACE-536とEPOの併用投与は、相乗的な赤血球形成応答を引き起こした。ACE-536は、GDF11(growth differentiation factor-11)に結合し、GDF11が仲介するSmad2/3シグナル伝達を強力に阻害した。GDF11はin vivoおよびex vivoでマウスの赤芽球成熟を阻害した。赤芽球前駆細胞でのGDF11およびActRIIBの発現は成熟に伴って徐々に低下することから、GDF11は赤芽球分化後期段階で阻害的役割を果たしていると考えられる。RAP-536投与も、骨髄異形成症候群(MDS)のマウスモデルでSmad2/3活性化、貧血、赤芽球過形成および無効造血を軽減した。これらの知見は、赤芽球成熟にトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)スーパーファミリーのシグナル伝達が関与していることを示唆しており、またACE-536が無効造血によって引き起こされるものを含めた貧血の新しい治療法となる可能性を明らかにしている。