免疫:腸内細菌の腸管外移行に対して動員された好中性顆粒球は組織傷害を介して移植片対宿主病を悪化させる
Nature Medicine 20, 6 doi: 10.1038/nm.3517
急性移植片対宿主病(GVHD)は同種造血細胞移植(allo-HCT)の適応範囲をかなり狭めている。抗原提示細胞とT細胞は通常、GVHDの病因と関連する細胞集団である。また、好中球は最大のヒト白血球細胞集団であり、ケモカインを切断し、活性酸素種を産生することでT細胞の活性化を促進する。従って、同種免疫応答の際に、好中球は移植の前処置レジメンによって引き起こされる組織傷害を広げる可能性がある。我々は、allo-HCT後のマウスの回腸への好中球浸潤をミエロペルオキシダーゼ活性を用いるin vivo画像化を使って解析し、その浸潤の程度が局所の微生物叢に依存しており、無菌条件下では浸潤が認められないことを見いだした。物理的あるいは遺伝学的操作によって好中球を欠如させると、GVHDに関連する死亡率が低下した。好中球でのCybb(cytochrome b-245, beta polypepride、別名NOX2)の選択的欠損はROS産生障害を引き起こし、それが組織傷害の軽減とGVHDに関連する死亡率の低下やエフェクター表現型を持つT細胞数の減少につながるので、好中球がGVHDを重症化させるには活性酸素種(ROS)が必要である。遺伝子導入によってBcl-xLを過剰発現させ生存性を高めた好中球は、GVHDの重症度を上昇させた。これとは対照的に、Toll様受容体2(TLR2)、TLR3、TLR4、TLR7、TLR9が全て欠損した好中球(細菌の腸管外移行によって通常はあまり強く活性化されない)を野生型C57BL/6マウスに移入すると、GVHDの重症度は軽減された。ヒトでは、腸管GVHDの重症度がGVHD病変部に存在する好中球の数と相関した。本研究は、マウスとヒトの両方でGVHDの病因に好中球がこれまで知られていなかった役割を担っている可能性を示している。