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心疾患:心臓のBIN1はT管膜を折りたたみ、イオン流出を制御して不整脈を制限する
Nature Medicine 20, 6 doi: 10.1038/nm.3543
心筋細胞のT管はイオン流量の調節に重要である。BIN1(Bridging integrator 1)は、カルシウムチャネル輸送に関わるT管タンパク質であり、不全心で発現が減少する。今回我々は心臓の正常なT管では内膜が密に折りたたまれていて保護的な働きをしており、この構造はBIN1の心臓アイソフォームにより形成されることを見いだした。心臓のBin1を欠失するマウスでは、T管の折りたたみが疎になり、これによって心筋細胞の全体的な形状は変化しないが、細胞外カルシウムイオンとカリウムイオンの局所的な自由拡散が引き起こされ、活動電位持続時間の延長と心室不整脈に対する感受性上昇がもたらされる。また、T管内膜の折りたたみ構造は、BIN1アイソフォームBIN1+13+17の発現により回復することが分かった。BIN1+13+17は、N-WASP依存的アクチン重合を促進して、心臓のZ盤でT管膜を安定化する。BIN1+13+17はアクチンを動員しT管膜を折りたたんで「ファジーな空間」を作り出し、これがイオン流出を制限することで保護的に働く。後天性心筋症で見られるようにBIN1+13+17アイソフォームの量が減少すると、T管の形状が変化して、その結果不整脈が起こることがある。