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老化:マウスでは若齢個体の血液が、認知機能とシナプス可塑性の加齢に関連した障害を回復させる
Nature Medicine 20, 6 doi: 10.1038/nm.3569
ヒトの寿命が延びるにつれて、人口のかなりの部分が加齢に伴う認知障害を患うようになり、加齢の影響に対抗する手段の探索が重要となっている。今回我々は、老化した動物を若齢動物の血液に曝露すると、脳に既に現れている加齢の影響が分子、構造、機能、および認知レベルで中和され、回復が見られることを報告する。若齢動物と老齢動物の循環系を連結した異時性の並体結合体の全ゲノムマイクロアレイ解析により、老齢マウスの海馬でシナプス可塑性に関連する転写の変化が見つかった。異時性並体結合体の老齢個体の海馬では、成熟ニューロンの樹状突起棘密度が増加し、シナプス可塑性が改善された。認知レベルでは、若齢マウス血液の血漿を老齢マウスに全身的に投与すると、恐怖条件付け文脈学習と空間学習および記憶が向上した。若齢動物の血液への曝露によって引き起こされた構造および認知に関する増強の一部は、加齢海馬でのサイクリックAMP応答配列結合タンパク質(Creb)の活性化により仲介される。我々の結果は、老齢マウスをその晩年に若齢マウス血液に曝露することによって、シナプス可塑性の若返りと、認知機能の改善が可能であることを示している。