Technical Report
がん:がん特異的プラズモン性ナノバブルを用いた、化学放射線治療の細胞内オンデマンド増幅
Nature Medicine 20, 7 doi: 10.1038/nm.3484
化学放射線治療に抵抗性のあるがんでは、治療の有効性と安全性が制限される。今回我々は、化学療法と化学放射線療法の効果を、オンデマンドでがん細胞特異的に細胞内増幅する手法を示す。この方法では、金ナノ粒子とレーザーパルスを使って細胞内に機械的衝撃を引き起こす。がんが悪性であると、がん細胞内で薬剤ナノ担体や金ナノ粒子のクラスター形成が促進される。このクラスターにレーザーパルスを照射すると、プラズモン性ナノバブルが発生し、この機械的な爆発が宿主がん細胞を破壊したり、あるいはリポソームやエンドソームを破壊して薬剤を細胞質内に放出させる。同じクラスターが、外部からのX線も局所的に増幅する。プラズモン性ナノバブルの機械的衝撃、それに放出された薬剤とX線増幅の細胞内相乗効果によって、抵抗性を示す悪性頭頸部がんに対する標準的な化学放射線療法の有効性が、in vitroで100倍、in vivoで17倍になり、また、薬剤の有効投与量およびX線の有効入射線量は臨床用量の2〜6%に減り、正常細胞は効率よく影響を免れた。今回開発したこの「quadrapeutics(4種療法併用)」技術は、臨床で認可されている4種類の療法を組み合わせており、標準的なマクロな治療を、オンデマンドの細胞内セラノスティクス(画像診断と治療の融合)というミクロな治療法へと変化させ、治療の有効性や特異性を大幅に増幅させることができる。