Editorial

再生医学を進歩させる

Nature Medicine 20, 8 doi: 10.1038/nm.3658

再生医学によれば、損傷を受けたり罹患したりした組織を置換できると考えられている。だが、これを臨床で成功させるには、幹細胞ニッチの生物学的性質に関する基本的な理解をさらに進める必要があり、幹細胞生物学とそれ以外のさまざまな分野との連携が必要となる。 再生医学という言葉が科学界で使われるようになってから15年がたつが、再生医学を臨床の場で活かすのを妨げる障害を、再生医学だけで克服できるのかどうかはまだ明らかになっていない。Nature MedicineNature Biotechnologyと共同企画した今月号の特集では、幹細胞研究についての最新の進歩をまとめた総説に加えて、そうした研究を支える技術についても取り上げている。一方、幹細胞療法の安全性についての研究は進展が遅れている。幹細胞の維持、あるいは分化を調節することが分かっている因子の多くは腫瘍の発症にも関わっているため、再生医療に使用する目的でこうした因子に軽率に手を加えることは、腫瘍形成という望ましくない結果を招く可能性がある。理由はこれだけではないが、基礎研究の結果を直接臨床に持ち込むのは、必ずしも適切なやり方とはいえない。Nature MedicineのNEWSでは、こうした問題について、規制を求める動きがあることが報告されている(p. 796)。一方、幹細胞の品質についても基準の設定が望まれるようになっている。基礎研究で得られた知見が、再生医療の成功と安全性に必要とされる基準となるかどうかを明らかにする際に重要となるのは、そこで使われている新技術であろう(p. 797)。Nature Medicineの今回の特集がNature Biotechnologyとの共同企画となっているのは、こうした理由のためでもある。今回の特集が読者諸氏にとって有益かつ刺激的なものとなることを我々は希望している。

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