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神経変性疾患:水溶性ニューレグリン1はシャルコー・マリー・トゥース病1A型の齧歯類モデルで病因に影響を及ぼす
Nature Medicine 20, 9 doi: 10.1038/nm.3664
シャルコー・マリー・トゥース病1A型(CMT1A)は最も広く見られる遺伝性ニューロパチーで、PMP22(peripheral myelin protein of 22 kDa)をコードしている遺伝子の重複が原因であり、治療法はまだ知られていない。CMT1Aの特徴は脱髄だが、臨床表現型は軸索喪失度によって決まり、患者は進行性の筋力低下や感覚障害に苦しむことになる。CMT1Aは20歳以下で発症し、歩行障害、足変形、電気生理学的異常は小児期に既に見られる。本論文では、Pmp22遺伝子を導入したCMT1Aの齧歯類モデルでは、シュワン細胞に出生後成長期の初期を通じて持続的に分化障害が起こっており、これはPI3K-AktおよびMek-Erkシグナル伝達経路の活性のアンバランスが原因であることを示す。軸索でのニューレグリン1(NRG1)1型の過剰発現によるPI3K-Aktシグナル伝達の亢進が、異常なシュワン細胞に分化を促し、末梢神経の軸索を維持することが分かった。特に、CMT1Aラットモデルを用いた前臨床実験治療では、治療を生後成長初期に限定した場合、水溶性NRG1が障害されていた末梢神経発生を効果的に回復させ、軸索は成体になっても生存が維持された。我々の知見は、限定された時間枠内でのシュワン細胞分化が、軸索生存の長期にわたる維持に非常に重要であることを示唆している。