Technical Report

免疫:ヒト抗体の重鎖軽鎖ペアレパートリーの詳細な決定と分析

Nature Medicine 21, 1 doi: 10.1038/nm.3743

ハイスループットな免疫レパートリー配列解析法は、感染後やワクチン接種後に、また自己免疫で生じる適応免疫応答を解明する上で重要な手法の1つとなっている。しかし、自然抗体の可変的な重鎖軽鎖ペア(VH-VLペア)の決定はいまだに大きな難問であり、典型的な検体中に含まれる1×106個以上のB細胞を適切に調べられる技術は現在存在しない。今回我々は、1回の実験で2×106個以上のB細胞に由来する抗体VH-VLレパートリーの配列を解析し、かつそのVH-VLペアリングの正確さが97%以上である、エマルションを用いた低コストの1細胞解析手法を開発した。簡便なフローフォーカシング装置を用いて、単一B細胞を細胞溶解溶液やmRNA捕捉用磁気ビーズを含むエマルション液滴内に封入した。これによって得られた単一細胞由来のmRNAを鋳型としてエマルション内でRT-PCRをし、VH-VLアンプリコンを生成させ、次世代シークエンス解析を行った。この手法を用いてヒトのドナー3人の大規模なVH-VLレパートリー解析を行ったところ、(i)個体間で共通性の高い、もしくは「一般的な」VL遺伝子の性質、頻度及びペアリング傾向、(ii)自己免疫機構に関連するアレリック・インクルージョンの健常者における検出、および(iii)遺伝子使用やCDR3鎖長の観点から、HIV-1やインフルエンザなどの急速に進化するウイルスに対する広域中和抗体に関連した特徴を持つ抗体の存在、といった免疫学上の新たな知見が得られた。

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