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腎疾患:腎尿細管上皮細胞における脂肪酸酸化の欠陥は腎繊維症の発症に重要な役割を持つ

Nature Medicine 21, 1 doi: 10.1038/nm.3762

腎繊維症は進行性で通常不可逆的である組織学的症状で、慢性で末期の腎臓病の原因となる。本論文では健常者と腎繊維症患者からなる大規模コホート(n=95)に由来するヒト尿細管検体の全ゲノム・トランスクリプトーム解析に加えて、システム生物学的解析とネットワーク解析とを行い、この疾患を発症している腎臓で調節異常が最も多く見られる経路が炎症と代謝であることを突き止めた。また、尿細管間質性繊維症を発症しているヒトおよびマウスモデルでは、対照群と比べて脂肪酸酸化(FAO)に重要な酵素と調節因子の発現が低下しており、細胞内の脂質蓄積がより多くなることが分かった。in vitro実験で、尿細管上皮細胞でのFAOの阻害がATP欠乏、細胞死、脱分化や細胞内脂質蓄積などの繊維症で見られる表現型を引き起こすことが示された。対照的に、遺伝学的、あるいは薬理学的手法により脂肪酸代謝を回復させると、マウスが尿細管間質性繊維症を起こしにくくなることが分かった。これらの結果は、FAOの代謝異常の修正が慢性腎疾患の予防や治療に役立つ可能性を示唆している。

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