Article
脂質代謝:コレステロールとトリグリセリドの恒常性を調節するマイクロRNAの全ゲノム規模での確認
Nature Medicine 21, 11 doi: 10.1038/nm.3980
ゲノム規模関連解析(GWAS)によって、遺伝子とさまざまな病理学的形質との関連づけがなされてきた。しかし、マイクロRNA(miRNA)などの調節性非コードRNAが遺伝的疾病素質に関わっているのかどうかはまだよく分かっていない。我々は、188,000人以上から得られたGWASメタ解析データを使って、循環血中脂質レベルの異常に関連する一塩基多型(SNP)の近傍領域にある69個のmiRNAを見つけ出した。これらのmiRNAの一部(miR-128-1、miR-148a、miR-130b、miR-301b)は、コレステロール-リポタンパク質〔例えば低密度リポタンパク質(LDL)受容体(LDLR)やABCA1(ATP-binding casette A1)コレステロール輸送体など〕の輸送に関与する重要なタンパク質の発現を制御している。このようなmiRNAのヒト肝臓での発現データや、異常な血中脂質レベルへの遺伝的関連と一致して、高脂肪食を与えたC57BL/6JマウスおよびApoeヌルマウスでは、miR-128-1もしくはmiR-148aの過剰発現やアンチセンス配列による標的化は、脂質の輸送や代謝に関わるタンパク質の肝臓での発現の変化や、循環血中のリポタンパク質-コレステロールおよびトリグリセリドのレベル変化を引き起こした。まとめると今回の結果は、miRNAの発現変化は血中脂質レベルの異常を引き起こし、ヒト心血管代謝疾患の素質となっている可能性があるという説を裏付けている。