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がん:化学的に誘発された皮膚がんでの変異の全体像によって明らかになった転移の進化
Nature Medicine 21, 12 doi: 10.1038/nm.3979
ヒトの腫瘍は高い遺伝的不均一性を示すが、サブクローンの転移播種のタイミングと経路に影響する過程については分かっていない。本研究では、遺伝的に不均一なマウスに由来する、マッチした良性と悪性および転移性の皮膚がん103例について行われた全エキソーム塩基配列解読の結果を使って、ほとんどの転移が原発性腫瘍から同期して播種していることを示す。この結果は、直線的な進化ではなく平行進化が転移の有力なモデルであることを裏付けている。がん腫原発巣と、それにマッチする転移がんの間で共通する変異は、発症に用いた発がん性物質のジメチルベンゾアントラセンに特有のAからTへの変異シグネチャーを持つが、共通していない変異は主にGからTへの変異で、これは酸化ストレスと関連づけられているシグネチャーである。同じ宿主動物でも転移するがん腫と転移しないがん腫があることから、転移の播種に影響する腫瘍固有の因子の存在が考えられる。また、決定的な対立遺伝子特異的変異の生殖細胞系列多型の重要性も実証され、HrasやKrasの変異による発がん開始に特異的に関連する体細胞性遺伝子変異が突き止められた。ヒトがんの遺伝的不均一性を模倣するマウス腫瘍は、転移のクローン進化を理解する手掛かりとなり、新規治療法を検討するためのヒトに近いモデルとなる。