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がん:急性白血病で発がん性転写因子をPARP阻害剤を使った合成致死の標的とする
Nature Medicine 21, 12 doi: 10.1038/nm.3993
急性骨髄性白血病(AML)のほとんどは発がん性転写因子により引き起こされるが、従来これらの因子は低分子阻害剤を用いて治療標的とすることが難しいと考えられてきた。本研究では、融合がん遺伝子のRUNX1-RUNX1T1にコードされるAML1-ETOや、PML-RARAにコードされるPML-RARα融合がんタンパク質などの抑制的転写因子により引き起こされたAMLは、PARP(ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ)の阻害に非常に高い感受性を示すこと、その原因の一部は主要な相同組換え(HR)関連遺伝子の発現抑制と、DNA損傷応答(DDR)機能不全であることを示す。対照的に、強い転写活性化能を持つMLL(mixed-lineage leukemia、KMT2Aにコードされる)の融合によって引き起こされた白血病ではDDRは十分機能していて、PARPの阻害に感受性を示さない。MLLの下流標的であり、さまざまなHR関連遺伝子の発現を活性化するHOXA9を、遺伝学的あるいは薬理学的に阻害するとDDRが障害されて、MLL白血病がPARP阻害剤(RARPi)に対して感受性を示すようになる。逆に、HOXA9を過剰発現させると、AML1-ETOやPML-RARα形質転換細胞がPARPi耐性を獲得した。以上の結果は、白血病治療にPARPiによる合成致死が有用である可能性を示していて、AMLにおけるPARPi感受性を支配する新規の分子機構を明らかにしている。