遺伝子治療:筋ジストロフィーマウスモデルでのトリシクロ-DNAオリゴマーを用いたエキソンスキッピングによる機能修正
Nature Medicine 21, 3 doi: 10.1038/nm.3765
アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)は多数の遺伝的疾患でエキソンスキッピングによる治療的修正に使えると期待されており、AONを使った初めての薬剤が神経筋疾患に対しての臨床試験に入っている。しかし、AONの化学的研究や薬剤設計が進歩しているにもかかわらず、AONの全身的な使用は組織への取り込みが不十分であることで制限されており、最近の臨床報告では十分な治療効果がまだ得られていないことが確認されている。本論文では、トリシクロ-DNA(tcDNA)から作製された、独特の薬理学的特性を示す新種のAON類では、全身投与後に多数の組織でこれまでにない高い取り込みが見られることを示す。我々は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の2つのマウスモデルで、tcDNA-AONのこれらの性質を実証した。DMDはジストロフィンをコードする遺伝子のフレームシフトによる欠失あるいはナンセンス変異によって引き起こされることが多い神経遺伝学的疾患で、進行性の筋力低下、心筋症、呼吸不全および神経認知障害を特徴とする。現在使われている被覆のないAONは心臓に入らないし、血液脳関門も実際上越えられないが、tcDNA-AONの全身送達は骨格筋と心臓、またこれらよりは少ないが脳でジストロフィン発現の大幅な救済を引き起こすことが分かった。我々の結果は、DMDマウスモデルで心臓−呼吸機能の生理的改善と行動的特徴の修正を初めて実証したものである。これにより、tcDNA-AONの化学的性質は、DMDなどの神経筋疾患、あるいは全身治療が必要でエキソンスキッピングの手法が使えるような疾患のための将来の治療手段として特に関心を集めると考えられる。