糖尿病:膵臓アルファ細胞のグルコース輸送体SGLT2のダパグリフロジンによる阻害はグルカゴン分泌を引き起こす
Nature Medicine 21, 5 doi: 10.1038/nm.3828
2型糖尿病(T2D)は、インスリン抵抗性やインスリン分泌の欠如のために生じたインスリンシグナル伝達の異常によって起こる慢性的な高血糖を特徴とする。T2Dでは、グルカゴンと内因性糖新生(EGP)の増加も見られるようになる。ダパグリフロジンなどのグリフロジンは新たに承認された経口抗糖尿病薬で、腎臓のナトリウム–グルコース共輸送体2(SGLT2)の機能を特異的に阻害するため、糖尿病患者では腎臓でのグルコース再吸収を防止して尿糖を増加させながら、高血糖を軽減する。しかし、T2D患者へのグリフロジン投与は血漿中グルカゴンとEGPを上昇させ、その機序は分かっていない。グリフロジンを投与されたT2D患者では、EGPが上昇するにもかかわらず、プラセボを投与された患者よりも血糖レベルが低いが、これはおそらく尿糖の増加によるものである。しかし、その結果として起こる血漿グルカゴンレベルの上昇は副作用となるおそれがあり、すでに高グルカゴン血症が見られる患者集団ではそれが特に懸念される。本論文では、SGLT2が膵島のグルカゴン分泌アルファ細胞で発現されることを示す。我々はさらに、T2D患者の膵島および慢性的な高血糖に曝露した正常な膵島では、非糖尿病患者の膵島に比べて、SGLT2をコードするSLC5A2の発現が少なく、グルカゴン(GCG)遺伝子の発現が多いことを見出した。さらに、HNF4A(hepatocyte nuclear factor 4-α)がヒトアルファ細胞に特異的に発現していて、そこでSLC5A2発現を制御していること、またその発現が高血糖により低下することも分かった。また、ヒト膵島でsiRNA誘導遺伝子サイレンシングによるSLC5A2の阻害、あるいはダパグリフロジン投与によるSGLT2のサイレンシングを行うと、KATPチャネルの活性化を介して、ヒト膵島でグルカゴン分泌が引き起こされた。さらに、ダパグリフロジンの投与は健常マウスでグルカゴン分泌と肝臓でのグルコース産生をさらに促進し、そのため絶食によって引き起こされる血漿グルコースの減少が制限されることも明らかになった。総合すると以上の結果は、SGLT2のこれまで知られていなかった役割を明らかにしており、ダパグリフロジンがアルファ細胞の分泌促進物質であることを示している。