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がん:複雑度の高いライブラリーを用いるバーコーディング法を使って、がん治療に対する応答におけるクローン動態を調べる
Nature Medicine 21, 5 doi: 10.1038/nm.3841
がん治療に対する耐性は臨床における重大な難問である。最近の研究で、腫瘍内の不均一性が治療耐性の原因となっていることが明らかにされている。しかし、耐性が主に既存の変化によって駆動されるのか、それともde novoな変化によって駆動されるのかは明らかになっていない。その理由の1つは、次世代塩基配列解読法の分解能に限界があることである。この問題に対処するために、我々は複雑度の高いバーコードライブラリーであるClonTracerを開発した。これによって、薬剤処理下で100万個以上のがん細胞を高分解能で追跡することが可能になる。2つの臨床関連モデルでのClonTracerを用いた研究により、耐性クローンの大部分は投薬治療を選択的に回避した既存の小規模な細胞集団の一部であることが示された。さらに、ClonTracerを用いることで、併用療法の耐性クローン抑制能力を定量的に評価できた。これらの知見は耐性クローンが治療前に存在していることを示唆しており、これによって初回治療の重複しない耐性機構を標的とする併用療法を望ましいものにできると考えられる。このように、ClonTracerを使うバーコーディング法は、治療方式を最適化してがんの治癒を目標とする併用療法を選び出すための有用な手段となるだろう。