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網膜疾患:Robo1とRobo2を介するSlit2シグナル伝達は網膜の血管新生に必要である
Nature Medicine 21, 5 doi: 10.1038/nm.3849
眼内血管新生性疾患は失明の主な原因である。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の働きを遮断すると視覚が改善されるが、患者全員が抗VEGF治療に応答するわけではなく、血管新生を防止する別の手法が必要とされている。Slit(Slit-family protein)は、神経系で伸長中の軸索に反発するRobo(Roundabout)受容体のリガンドである。Robo1の発現は、眼内血管新生性疾患では変化しており、以前に行われたin vitro研究ではSlitの血管新生促進作用と抗血管新生作用の両方が報告されている。しかし、眼内血管新生にSlitが関わっていることを裏付ける遺伝的証拠はない。今回我々は、さまざまなSlitとRoboタンパク質を欠損する条件付きノックアウトマウスを作製し、マウスの出生後の網膜と眼内血管新生性疾患のモデルの1つで、Slit2がRobo1とRobo2を介して強力かつ選択的に血管新生を促進することを明らかにした。その機序は、Robo1とRobo2を介して作用するSlit2が内皮細胞の遊走を促進するというものである。受容体のRobo1とRobo2は、Slit2あるいはVEGFが誘導するRac1活性化と葉状仮足形成の両方に必要とされる。従って、Slit2活性の遮断は眼内血管新生性疾患の患者で治療に使えると考えられ、これによって血管新生を抑制できる可能性がある。