Editorial 免疫療法:併用療法でがんを征服する 2015年5月1日 Nature Medicine 21, 5 doi: 10.1038/nm.3865 がんの免疫療法は、臨床家、患者、研究者そして科学ジャーナリストの強い関心を集めていて、改変T細胞を使う治療や、免疫チェックポイント遮断から得られた目覚ましい結果については「がんの治癒」という言葉さえ聞かれるようになった。また、この方法では治療への応答性が長期間持続するという点も、これまで見られなかった特徴といえる。最近第I相臨床試験が行われたチェックポイント阻害剤の抗PD-1と抗CTLA-4を組み合わせた併用療法は、この分野での主流といえるもので、単剤療法に比べて治療応答性がずっと高いことが明らかになっている。だが、こうした併用免疫療法を臨床で成功させるには、多くの問題を乗り越えなくてはならない。まず必要なのは、既存の多様な単剤療法について検討し、合理的な組み合わせを選び、最大の効果を得るようにすることである。さらに、応答性の目安となるバイオマーカーの探索も欠かせないだろう。次に、こうした療法に対して高い応答性を示す患者を選ぶ際には、患者の病態を把握した上で臨床試験の手順を個別に最適化する必要がある。こうした科学的な難問に加えて、必要となる多数の臨床試験を実施するには、後方支援や特許に関する手続き、研究資金も大きな問題となる。一部の非営利組織は製薬企業と協力して、研究や系統的な臨床試験の実施についてのこのような問題への取り組みを開始しているが、解決すべき事柄は多く、さらなる努力が必要となろう。 免疫療法はがん治療のこれまでの手順を一変させる可能性がある。この治療法の全体としての効果を最大にするのに、腫瘍生物学と腫瘍免疫学の研究成果の統合は、強力な手段となるはずだ。そして、研究者、製薬業界、資金提供団体と支援組織が協力して努力していくことは、個々の患者のがんの状況に応じた最良の併用療法の選択、能率的な患者選択、治療応答性の監視の継続を合理的かつ速やかに行うのに不可欠であり、「治癒」という言葉が聞かれる回数を増すことにつながるだろう。 Full text PDF 目次へ戻る