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がん:多領域塩基配列解読により明らかになった原発性乳がんのサブクローン多様性
Nature Medicine 21, 7 doi: 10.1038/nm.3886
がんを促進する基盤となっている生物学的異常は患者によってさまざまだが、がんゲノムの解読を行うことにより、個々の状況に合わせて治療法を適合させることが可能になるかもしれない。しかし、塩基配列解読を使う戦略は、腫瘍を代表するものとなる試料のサンプリングに左右されるところが大きい。我々は原発性乳がんのサブクローン構造を解明するために、50人の患者の腫瘍に由来する複数の試料(合計で303個)について、全ゲノム塩基配列解読と標的を選んだ塩基配列解読を行った。サブクローン多様性は症例によって変動し、空間的パターンに従っていた。厳密な時間的順序は見られず、PIK3CA、TP53、PTEN、BRCA2、MYCなどを含む、最もよく見られる乳がん遺伝子に影響する点変異や再配置は一部の患者では初期に生じているが、末期に生じる例もあった。50例のがんのうち13例では、標的となり得る変異はサブクローナルだった。化学療法耐性や、浸潤能あるいは転移能の獲得などの疾患プログレッションの特徴は、先行病変が検出できるサブクローン中で見られた。以上の知見は、原発性乳がんの臨床試験でのサブクローン構造や腫瘍進化の解析の重要性を明らかにしている。