がん:びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫でのイブルチニブを用いたB細胞受容体シグナル伝達の標的化
Nature Medicine 21, 8 doi: 10.1038/nm.3884
びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)の2つの主なサブタイプは、活性化B細胞様(ABC)DLBCLと胚中心B細胞様(GCB)DLBCLだが、この2つの発症機序は別であって、ABCはB細胞受容体(BCR)を標的とした変異を選択的に獲得して、慢性的に活性化したBCRシグナル伝達が助長される。ABCサブタイプでは現在使用可能な治療法による治癒率はほぼ40%で、これはGCB DLBCLの場合よりも悪く、ABCサブタイプ特異的治療戦略が必要であることをはっきり示している。我々は、BCRシグナル伝達の阻害剤であるイブルチニブに対してGCBは応答しないだろうが、ABC DLBCL腫瘍は応答するのではないかと考えた。再発性もしくは治療抵抗性DLBCL患者80人を含む第1/2相臨床試験で、イブルチニブはABC DLBCL患者の37%(14/38)で完全もしくは部分的な応答性が見られたが、GCB DLBCL患者で応答性が見られたのは5%(1/20)のみであった(P=0.0106)。ABC腫瘍のうちで、BCR変異を持つ腫瘍はイブルチニブに応答する頻度が高く(5/9、55.5%)、その中でもMYD88(myeloid differentiation primary response 88)変異を同時に持つ患者は特に高かった(4/5、80%)、この結果はin vitroで見られるBCR経路とMYD88経路の間の協働と一致していた。しかし、応答した人数が最も多かったのはBCR変異を持たないABC腫瘍で(9/29、31%)、ABCでの発がん性BCRシグナル伝達にはBCR変異は必要でなく、非遺伝学的機序によってシグナル伝達が開始される可能性が考えられる。これらの結果は、ABC DLBCLの治療のためのイブルチニブの選択的開発の必要性を裏付けるものだ。