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インフルエンザ:ヘマグルチニン幹領域ナノ粒子は異なる亜型のインフルエンザを防御する

Nature Medicine 21, 9 doi: 10.1038/nm.3927

インフルエンザに対する抗体応答は、主にヘマグルチニン(HA)糖タンパク質の球状部に集中しており、ここは次々と抗原連続変異(ドリフト)を起こすことから、インフルエンザワクチンの毎年の変更が必要になる。一方、免疫学的に準優位なHA幹領域は高度に保存されていて、複数のHA亜型に結合できる抗体によって認識される。今回我々は、H1 HA幹領域のみの免疫原を立体構造に基づいて開発し、これがマウスとフェレットで異なる亜型を防御したことについて報告する。立体構造に基づく設計の6回の反復サイクル(Gen1–Gen6)によって、免疫優性の球状部を欠損した連続的なH1 HA安定化幹領域(HA–SS)の免疫原が得られた。抗原性の解析、幹領域特異的モノクローナル抗体との複合体を形成した2種類のHA–SSの結晶構造の決定、およびフェリチンナノ粒子上のHA–SS(H1–SS–np)の低温電子顕微鏡による解析により、重要な構造要素の保存が確認された。マウスおよびフェレットでのH1–SS–npを用いたワクチン接種は広域交差反応性の抗体を誘導し、in vitroでのH5N1中和活性が検出されないにもかかわらず、異なる亜型であるH5N1インフルエンザウイルスの致死量での感染に対してマウスを完全に、フェレットを部分的に防御した。H1–SS–npで免疫したマウス由来の免疫グロブリンの無処置マウスへ受動的移入は、こうしたマウスをH5N1感染から防御したので、ワクチンが産生するHA幹領域特異的抗体は多様なグループ1インフルエンザ株を防御できることが明らかになった。

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