Technical Report
微生物学:宿主–微生物相間相互作用を腸内嫌気性細菌の代謝的標識によってin vivo画像化し、追跡する
Nature Medicine 21, 9 doi: 10.1038/nm.3929
腸内には嫌気性の共生細菌が高密度で棲み着いている。これらの微生物は免疫系の発生を方向付けるが、宿主–共生微生物相間の相互作用の解明には、腸内の嫌気的環境を調べる手段がないことが妨げとなっている。我々は代謝性オリゴ糖鎖工学と生体直交型クリックケミストリーの手法を用いて、広く存在し免疫学的に重要な共生細菌の1つであるBacteroides fragilisを含むさまざまな共生嫌気性菌を標識した。急性腹膜炎後のB. fragilisの播種について調べ、骨髄性細胞系譜とB細胞系譜でのB. fragilis菌体とその多糖成分の相互作用の特性を解析した。標識したB. fragilisが腸管に沿ってどのように分布し定着するかを明らかにすることができ、さらに、微生物相の多数の種を同時投与した後に起こるニッチを巡る競争も調べられた。また、腸内によく見られる3つの門(バクテロイデス門、ファーミキューテス門およびプロテオバクテリア門)に属する9種の共生細菌(嫌気性が8種、微好気性が1種)と、1種の好気性病原細菌(黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus)に蛍光標識を施した。この実験戦略によって、生体内二光子顕微鏡法や非侵襲的全身画像化などの多様な手法による嫌気性微生物ニッチの可視化が可能になった。この手法は、微生物の定着や宿主–微生物間相互作用をリアルタイムで調べるのにも使える。