Analysis
がん:ヒトのがんにおける複雑な挿入欠失の体系的な検出
Nature Medicine 22, 1 doi: 10.1038/nm.4002
複雑な挿入欠失(indel)は、共通したゲノム部位にさまざまな大きさのDNA断片の欠失と挿入が同時に起こることで形成される。本研究では、ゲノムモデリングツールのPindel-Cを用いて、8,000を超えるがん症例から得たサンプルのコード配列中に存在する体細胞性の複雑な挿入欠失を体系的に解析した結果を報告する。解析した症例のおよそ3.5%で、PIK3R1、TP53、ARID1A、GATA3、KMT2Dなどのがん関連遺伝子に285の複雑な挿入欠失が見つかった。複雑な挿入欠失のほぼ全てが、2,199サンプルについての以前の報告では見落とされていたか(81.1%)、あるいは間違って注釈付けされていた(17.6%)。インフレームの複雑な挿入欠失はPIK3R1やEGFRで多数見つかり、フレームシフトはVHL、GATA3、TP53、ARID1A、PTEN、ATRXに広く存在していた。さらに、複雑な挿入欠失には強い組織特異性が見られた(例えば、腎臓がんサンプルにおけるVHLや、乳がんサンプルにおけるGATA3など)。また、がん遺伝子であるEGFR、MET、KIT中のこれまでに見落とされていたが、ドラッガブルとなり得る変異について得られた知見は、構造解析の結果によって裏付けられている。今回の研究は、医学研究においては複雑な挿入欠失の発見と解釈の改善が非常に重要であることを示している。