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神経変性疾患:ハンチントン病で活性が抑制されているPPAR-δは正常な神経機能に必要であり、治療標的になり得る

Nature Medicine 22, 1 doi: 10.1038/nm.4003

ハンチントン病(HD)は進行性の神経変性疾患で、ハンチンチン(HTT)遺伝子中のCAGトリヌクレオチドリピート(HTTタンパク質のポリグルタミン鎖をコードする)の伸長により引き起こされる。我々は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δ(PPAR-δ)がHTTタンパク質と相互作用すること、また変異型HTTタンパク質がPPAR-δによる転写活性化を抑制することを見いだした。PPAR-δによる転写活性の上昇によってミトコンドリア機能障害が軽減され、HDモデルマウス由来のニューロン生存が改善した。マウス中枢神経での優性ネガティブPPAR-δの発現は、HD様表現型を再現する運動機能障害、神経変性、ミトコンドリア異常および転写の変化を誘導するのに十分であった。さらにマウス線条体の中型有棘ニューロン特異的に優性ネガティブPPAR-δを発現させると、線条体ニューロンの喪失を伴うHD様運動表現型が生じた。HDのモデルマウスでは、PPAR-δのアゴニストKD3010を使った薬理学的活性化により運動機能が改善され、神経変性が減少し、生存期間が延長した。PPAR-δの活性化は、in vitroでも、HD患者の幹細胞から作製した中型有棘様神経細胞でも、HTTタンパク質によって惹起される神経毒性を軽減させ、これはPPAR-δの活性化がHDやその関連疾患に有効である可能性を示唆している。

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