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神経変性疾患:タウによる26Sプロテアソームの機能障害および認知機能障害は、cAMP–PKAシグナル伝達の活性化により疾患早期に防止できる
Nature Medicine 22, 1 doi: 10.1038/nm.4011
ユビキチンプロテアソーム系(UPS)は誤って折りたたまれたタンパク質を分解する。このようなタンパク質の中には神経変性疾患への関与が示唆されるものが含まれる。我々は、タウオパチーのマウスモデルおよびUPSレポーターマウス(Ub-G76V-GFP系統)と交配したマウスで、タウ蓄積のプロテアソーム機能への影響を調べた。不溶性タウの蓄積は、脳の26Sプロテアソームのペプチダーゼ活性の低下、ユビキチン化タンパク質と分解されなかったUb-G76V-GFPの濃度上昇と関連していた。タウオパチーを発症しているマウスに由来する26Sプロテアソームにはタウが物理的に結合していて、ユビキチン化タンパク質、低分子ペプチドおよびATPの加水分解能が低かった。タウの組換えオリゴマーあるいは組換え原繊維とインキュベートした正常マウス由来26Sプロテアソームでも、同様の測定で加水分解能の低下が見られ、タウはタンパク質毒素(proteotoxin)であることが示唆された。cAMP–プロテインキナーゼA(PKA)シグナル伝達を活性化する物質を投与するとプロテアソーム機能障害が軽減するが、これはおそらくプロテアソームサブユニットのリン酸化を介していると考えられる。in vivoでは、このような投与が凝集タウ濃度の低下と認知能力の改善につながった。