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SSRI:セロトニン再取り込み阻害薬はマウスで局所的な抗吸収効果を無効にすることにより骨量減少を引き起こす
Nature Medicine 22, 10 doi: 10.1038/nm.4166
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は骨折のリスク上昇と関連づけられており、使用がますます広がるのにともなって懸念が高まっている。SSRIのこの有害な影響については解明が進んでおらず、そのためにこの副作用を回避する方法はまだ見つかっていない。本論文では、最も広く処方されているSSRIの1つであるフルオキセチン(Flx)が2つの異なる機序を介して骨のリモデリングに作用を及ぼしていることを示す。末梢では、Flxは抗骨吸収作用を示し、セロトニン再取り込みとは無関係の、細胞内Ca2+濃度と転写因子Nfatc1に依存する機序を介して破骨細胞の分化と機能を直接阻害する。しかしFlxは時間の経過とともに、脳セロトニン系に依存して交感神経の出力上昇も引き起こすようになり、この出力上昇による骨吸収の亢進は、局所的な抗吸収効果を相殺するのに十分であって、正味の結果としては骨形成が障害されて、骨量が減少することになる。そのため、この第2の作用をβ遮断薬プロプラノロールを併用することで無効化する一方で、末梢での影響はそのまま維持すると、マウスでFlxが誘導する骨量減少が防止された。従って今回の研究は、骨のリモデリングに対するSSRIの2つの作用様式を明らかにしており、長期間にわたるSSRI使用から生じる骨量恒常性に対する有害な影響を遮断する治療方針を示唆している。