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がん:AMP活性化型プロテインキナーゼ安定化ペプチドはマウスでがん悪液質における脂肪組織の消耗を軽減する
Nature Medicine 22, 10 doi: 10.1038/nm.4171
悪液質は多数のがん患者に見られる致死的なエネルギー消耗性症候群で、ほとんどの場合骨格筋や脂肪組織の病的な消失をもたらす。本論文では、腫瘍細胞への曝露が培養白色脂肪細胞で、またマウスでの腫瘍増殖が白色脂肪組織(WAT)で、それぞれむだなエネルギー消耗回路を誘導することを示す。腫瘍が誘導する身体衰弱に、脱共役タンパク質1(Ucp1)に依存する熱産生は必須ではないが、悪液質マウスのWATや腫瘍細胞上清で処理した脂肪細胞は一律に、脂肪分解および脂肪生成を担う経路の同時誘発という特徴を示した。逆説的だが、これに伴ってAMP活性化プロテインキナーゼ(Ampk)の不活性化が起こった。Ampkは細胞内エネルギーが低い状態にある末梢組織では一般に活性化されている。Ampkの不活性化は、Ampk分解とAmpkと相互作用するタンパク質Cideaの増量に相関していた。そのため、我々はAmpk安定化ペプチドであるACIPを開発した。ACIPはCideaの標的となるAmpkの相互作用面を覆うことで、in vitroおよびin vivoでWAT消耗を軽減した。従って、今回のデータは、脂肪細胞の脂質恒常性のUcp1非依存性のリモデリングが、腫瘍が誘導するWAT消耗における重要な事象であることを明らかにしており、WATでACIPに依存して起こるAmpk完全性維持が悪液質の将来的治療方針となると我々は考えている。