Perspective
脳の発達のタイミングと精神疾患の治療に重要な期間
Nature Medicine 22, 11 doi: 10.1038/nm.4225
病因となりうる遺伝的多様性や脳発達の感受性の高い時期に環境から受けた損傷などは脳機能に長期的な影響を及ぼし、その結果として学習障害から統合失調症のような複雑な精神疾患に至る障害が生じることは、次第に明らかになっている。また、動物モデルを使った最近の実験から、明確な神経学的症状および行動的症状が現れる前の、感受性の高い時期の治療的介入が、特定の病状の発症を阻止あるいは軽減する可能性が示唆されている。このような研究では、精神疾患の原因となる病態生理学的機構の動的性質の解明が、有効な治療法の開発に重要であると考えられている。本総説では、精神疾患の発達期間という新しい概念について論じ、さらにこの期間と疾患進行過程の解明との関連、また新しい治療法を設計できる可能性について考察する。また、こうした概念の下での精神疾患への早期介入の限界や注意点についても検討する。