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結核:解剖検体で見られたHIV関連結核菌のゲノム多様性から明らかになった宿主内伝播

Nature Medicine 22, 12 doi: 10.1038/nm.4205

結核菌(Mycobacterium tuberculosis)はいまだに世界的に主要な死因であり、HIV感染者ではとりわけ重要な死因となっている。結核菌の歴史を通じての伝播や、地域的流行における伝播については、系統解析により明らかにされてきたが、体内での播種についてはあまりよく分かっていない。本研究では、最小限の抗結核治療を受け、大部分はHIV血清反応陽性者であった、南アフリカ共和国クワズール・ナタール州の44人の死後肺と肺外生検から得られた2,693サンプルのゲノム解析について報告する。個々の患者の体内では、患者間での感染を必要とせずに純化選択が起きていたことが分かった。負の選択であるにもかかわらず、結核菌は患者内で多様化して亜系統を形成し、これらは数年にわたって共存していた。これらの亜系統だけでなく、混合感染による個々の株も肺全体にわたってそれぞれ特異な分布を示すことから、病原菌の移動に対する一時的な障壁の存在が考えられる。このような分布の結果、上気道から採取した標本は集団の多様性のごく一部しかとらえていないことが多く、これは結核発生の追跡や耐性診断についての現行の方法に疑問を投げかけるものである。系統解析は、肺から肺外部位への播種が、肺内部位間での伝播と同程度に起こっていることを示していて、少なくともHIV感染者では、器官内および器官間で類似した移動経路があるとする考えが裏付けられている。従って、ゲノム多様性は病原菌の多様化や、体内で繰り返し起きた播種の記録を提供するものといえる。

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