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急性膵炎:キヌレニン3‐モノオキシゲナーゼの阻害は急性膵炎の齧歯類モデルで多臓器不全を防止する
Nature Medicine 22, 2 doi: 10.1038/nm.4020
急性膵炎(AP)は、膵臓の広く見られる重篤な炎症性疾患で、非感染性炎症が全身性の多臓器不全症候群(MODS)と死亡につながる例の1つと見なされている。AP-MODSによる急性死亡率は20%を超え、最初の症状発現で死亡しなかった患者の寿命は、一般集団に比べると通常短い。AP-MODSの防止に使用できる特定の治療法はない。本論文では、トリプトファン代謝の重要な酵素であるキヌレニン3‐モノオキシダーゼ(KMO)がAP-MODSの病因に重要であることを示す。我々は、KMOをコードしているKmoを欠損し、実験的AP-MODSで肺、腎臓および肝臓への膵外組織損傷が起こりにくいというロバストな生化学的表現型を持つマウス系統を作出した。基質であるキヌレニンの修飾に基づき、医薬化学的手法を使った結果、オキサゾリジンオンGSK180が強力かつ特異的なKMO阻害剤であることが分かった。活性部位でのこの阻害物質の結合様式はX線共結晶構造解析により3.2 Å分解能で確認された。GSK180のin vivo投与はキヌレニン経路の代謝産物のレベルの迅速な変化を引き起こし、APのラットモデルでのMODS発症を起こりにくくする治療効果をもたらした。今回得られた知見は、KMO阻害がAP-MODS治療における新規な治療戦略であることを確証しており、重篤な疾患に対する創薬の新たな分野を開くものだ。