Letter
がん:去勢抵抗性の前立腺神経内分泌がんの分岐的クローン進化
Nature Medicine 22, 3 doi: 10.1038/nm.4045
前立腺がんでのアンドロゲン受容体(AR)標的治療に対する耐性機構として次第に認められてきたものの1つが上皮の可塑性であり、この場合は腫瘍細胞でのAR発現が低く、発現が見られない場合もあり、神経内分泌細胞の特徴を有することが多い。この「また別の」治療耐性細胞状態の原因や分子基盤はまだ十分に解明されていない。今回我々は、患者の転移腫瘍生検試料の全エキソーム塩基配列解読データの解析により、前立腺がんの組織学的特徴を持つ去勢抵抗性腫瘍(CRPC-Adeno)と前立腺神経内分泌がんの組織学的特徴を持つ去勢抵抗性腫瘍(CRPC-NE)の間で、ゲノムに大きな重なりがあることを見いだした。同一患者からの経時的に得られた生検試料の解析から、分岐的クローン進化に最もよく一致するモデルが示された。ゲノム規模のDNAメチル化解析からは、CRPC-NE腫瘍とCRPC-Adeno腫瘍の間に顕著なエピジェネティック的相異があることが明らかになり、また、AR非依存的な臨床症状を有するCRPC-Adeno試料もCRPC-NEであるとされたことから、エピジェネティックな修飾因子がこの治療耐性状態の誘導や維持に役割を担っている可能性が考えられる。今回の研究は、クローンの分岐進化を介した、また別の「ARが関与しない」細胞状態の出現が、進行前立腺がんでの治療耐性機構であることを裏付けている。