Perspective
精神神経疾患:シナプス可塑性とうつ病:ストレスと即効性抗うつ薬から得られた新たな知見
Nature Medicine 22, 3 doi: 10.1038/nm.4050
うつ病は広く見られ、破壊的影響をもたらす疾患である。現行の薬物療法は多くの患者に有効だが、効果が全くなかったり部分的であったりする患者の割合も高く、また抗うつ薬療法の効果が見られるまでに時間がかかることもあって、多くの患者が十分に治療されないままになっている。しかし、ストレスとヒトの気分障害に関する新たな神経生物学的考察からうつ病の発症の基盤にある機構が明らかになり、新規な抗うつ剤が考案されている。環境事象などのリスク因子は、神経の機能や形態を障害する分子レベルあるいは細胞レベルの複数の機序を収束させることでうつ病の一因となっており、こうした障害は気分の調節や認知機能に必須の回路の機能障害につながる。セロトニン再取り込み阻害薬などの現在使われている抗うつ薬はわずかな変化しか引き起こさない上に、効力が生じるのに数週から数か月かかるが、新規に開発された薬物による治療では、一般的な抗うつ剤に抵抗性を示す患者で投与後数時間以内に気分評定に改善が見られることが最近示された。このような新規な薬物はまた、ストレスによって引き起こされるシナプス欠損を同様の時間規模で回復させることも明らかになっている。