Letter 網膜疾患:網膜での脂質とグルコースの代謝は脂質センサーFfar1を介して血管新生を引き起こす 2016年4月1日 Nature Medicine 22, 4 doi: 10.1038/nm.4059 代謝速度の高い組織は、グルコースに加えて脂質もエネルギーとして使っていることが多く、これは過食や飢餓の際に生存に有利となる。現在の定説では、エネルギー消費の大きい光受容器はグルコースに依存していると考えられている。今回我々は、網膜もエネルギーとして脂肪酸のβ酸化を用いていることを示す。また、脂質センサーのFfar1(free fatty acid receptor 1)が、脂肪酸が使用可能な際にはグルコース取り込みを抑制することが分かった。超低密度リポタンパク質受容体(Vldlr)は光受容器に存在し、また代謝速度の高い他の組織にも発現していて、トリグリセリド由来の脂肪酸の取り込みを促進する。脂肪酸の取り込みが低いが循環中の脂質レベルが高いVldlr−/ −マウスの網膜では、Ffar1がグルコース輸送体Glut1の発現を抑制していることが分かった。こうして光受容器へのグルコースの取り込みが抑制されると、脂質およびグルコースの不足という二重の燃料不足と、クレブス回路の中間産物α-ケトグルタル酸(α-KG)のレベル低下が引き起こされる。α-KGレベルの低下は、飢餓状態のVldlr−/−光受容器による低酸素誘導因子1a(Hif1a)の安定化と血管内皮細胞増殖因子A(Vegfa)分泌促進を引き起こし、これが新血管形成につながる。Vldlr−/−網膜で見られる異常な血管(通常は無血管の光受容器に侵入する)は、加齢黄斑変性症(AMD)の新血管形成を伴うサブセットである網膜血管腫状増殖で見られる血管異常に類似している。ヒトではAMDは硝子体での高いVEGFAレベルと関連している。従って、光受容器での脂質やグルコースのエネルギー代謝の調節異常は、黄斑部毛細血管拡張症や新血管形成を伴うAMDなどの網膜疾患の推進力となっている可能性がある。 Full text PDF 目次へ戻る