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HIV:前適応したHIVの伝播の影響
Nature Medicine 22, 6 doi: 10.1038/nm.4100
ヒト白血球抗原クラスI(HLA)拘束性のCD8+ Tリンパ球(CTL)応答は、HIV-1の制御に極めて重要である。HIVはこの応答を逃れることがあるが、ウイルスのエスケープ変異株のより長期的な影響ははっきり分かっていない。それは、このような変異株もまた本来持っているウイルスの適応性が低下することがあるからである。この問題に取り組むために、我々はHLAプロファイルに対するHIVの適応度を決定するための測定法を開発した。本論文では、レシピエントで発現されるHLA分子に前適応したウイルスの伝播は、免疫原性の減弱、ウイルス負荷の上昇およびCD4+ T細胞数の減少加速と関連することを示す。さらに、伝播中のウイルス間での前適応の広がりの程度によって、特定のHLA対立遺伝子の発現に起因する転帰変動の大部分が説明されることが分かった。このように、ウイルスの前適応は免疫応答の「穴」を利用して起こる。このような穴を明らかにすることは、ウイルス変異株から機能的応答を誘導することを目指したワクチン戦略、またHIVリザーバー根絶の成功を達成する幅広いCTL応答を必要とするHIV治癒戦略に重要となるだろう。