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糖尿病:やせによって選択されたマウスの脂肪細胞で発現される抗糖尿病標的がチオ硫酸サルファートランスフェラーゼであることの遺伝学的確認
Nature Medicine 22, 7 doi: 10.1038/nm.4115
肥満や糖尿病に対する抵抗性の遺伝的機構が解明されれば、この世界的な健康問題の新たな治療戦略が明らかになるかもしれない。我々は、60世代以上にわたって低肥満として選別が続けられてきた「やせ」の多遺伝子性マウスモデルを用いて、ミトコンドリアのチオ硫酸サルファートランスフェラーゼ(Tst、別名ロダネーゼ)が、脂肪細胞で選択的に発現が上昇する肥満抵抗性遺伝子候補であることを明らかにした。脂肪でのTst発現増大は、多様なマウス系統で複数のメタボリック健康指数(index of metabolic health)と相関していた。遺伝子操作によりマウスの脂肪細胞でTstを過剰発現させると、食餌誘発性肥満やインスリン抵抗性糖尿病が起こりにくくなった。Tst欠失マウスは糖尿病が顕著に悪化するが、TSTの薬理学的活性化はマウスで糖尿病を軽減した。機構的には、TSTはミトコンドリア機能を選択的に強化するとともに活性酸素種と硫化物を分解した。ヒトでは、脂肪組織でのTSTmRNA発現が、脂肪組織のインスリン感受性とは正に相関し、脂肪量とは負に相関していた。このように、Tstが脂肪細胞ミトコンドリア機能の有益な調節因子であると分かったことは、2型糖尿病患者の治療に関係してくるだろう。